廃食油を熱エネルギーにするバイオマス燃料装置(BMB)

バイオマス燃料装置(BMB)は、廃食油を熱エネルギーにリサイクルする装置です。分かり易く言うとボイラーと言った方が理解し易いかもしれませんね。

ダイオキシンなどの有害物質を発生させずに、カーボンフリーでCO2の排出もごくわずかです。バイオマス燃料装置の動力として、廃食油以外では、電気・ガス・水の利用だけで済みます。

バイオマス燃料装置(BMB)の特徴は以下の通りです。

  • 廃食油を超音波で改質してBKF(改質後の廃食油)に変えてから特殊なバーナーで直接燃焼させて利用します。
  • バイオマス燃料装置の特殊バーナーは、蒸気ユニット・温水ユニットなどとの組み合わせができます。
  • 廃食油の中に含まれる水分やカスのほとんどを改質してBKFとして燃料化ができます。
  • バイオマス燃料装置の特殊バーナーは、煙害・臭気などの公害を発生させません。
  • 運転時に利用する廃食油以外のエネルギーはごくわずかです。

といったように、廃食油をそのまま燃料として使用することができるのが特徴的で、余分な作業がいらないというのが魅力的な装置なのです。

このバイオマス燃料装置(BMB)が広まることで、バイオマス新エネルギーとして、化石燃料の代替燃料として利用することで、エコな未来を創造することができるでしょう。

また、現在は、廃食油のほとんどが未活用のまま処分されていることから、このような廃棄物系燃料をバイオマスエネルギーとして利用することによって、廃棄物の適正な処理や活用に繋がり、循環型社会の構築が実現できるかもしれません。

現在、バイオマス燃料装置(BMB)は、いろいろな場所で利用されています。以下に活用方法などの一例を上げます。

  • 食品工場やレストランのフライヤーから発生した廃食油を利用して、BMBで蒸気を作って蒸気式フライヤーで利用する。
  • 行政で市民から回収した廃食油を利用して、BMBで温水を作って温水プールや温泉として活用する。
  • コンビニ各店舗から集めた廃食油を利用して、BMBで蒸気を作って、セントラルキッチンの蒸し器に利用する。
  • 農協で集めた廃食油を利用して、BMBで蒸気を作ってビニールハウスで利用する。
  • 学校やPTAで集めた廃食油を利用して、BMBで温水を作って暖房で利用する。

など、バイオマス燃料装置(BMB)は、今後も様々な活用の場所を模索し、リサイクル社会を牽引していく存在になっていくと考えられています。

廃食油を使ったエコにも優しいキャンドル

皆さんも聞いたことがある人や実際に作った人もいると思いますが、廃食油からキャンドルを作る事ができます。

キャンドルを作るにあたって、先ず、準備するものは、以下の通りです。

  • 廃食油 100ml~200ml(作成する容器の大きさに合わせて調整してください)
  • 廃油凝固剤(固めるテンプルやパラフィンなど)もしくは余っている使い掛けのキャンドルのロウを溶かして液体にしたものでも代用可能です。
  • 好きな色のクレヨンもしくは余っている色つきキャンドルでも代用可能です。
  • お好みの容器
  • 太めのタコ糸やキャンドル用の芯材
  • 割り箸
  • 湯せんするための容器
  • アロマキャンドルにしたい場合は、好きなアロマオイル

準備ができたら、作り方を紹介します。

廃食油でキャンドルを作る手順

お好みのクレヨンを細かく削る(砕く)

カッターで削るか。ハンマーなどで細かく砕いてください。クレヨンを使う理由は、夏を与えると直ぐに溶けて、ロウにも混ざり易い性質を持っているからです。

数回使用した廃食油(黒くなっていないもの)を濾過して不純物を取り除く

濾過のやり方は、コーヒーのフィルターや、ティッシュペーパーを重ねたものでも大丈夫です。不純物はキャンドルに混ざってしまうと見た目が良くないので、出来る限り不純物は取り除きましょう。

また、濾す前に、廃食油を少しだけ熱すると、サラサラになって、濾過し易くなります。

濾過した廃食油を熱して、削った(砕いた)クレヨンを混ぜて色付けをします。

濾過した廃食油は80℃程度まで熱してください。熱したらクレヨンを混ぜて優しく十分に混ぜて溶かしこみましょう。

廃油凝固剤を入れて軽くかき混ぜる

廃油凝固剤の投入量の目安として、100mlあたり5〜6g程度となります。

火を止めて60℃程度まで冷ましてからアロマオイルを入れてかき混ぜる(アロマキャンドルを作る場合)

廃食油の温度が高すぎると、香りが飛んでしまうのと、逆に低すぎると廃食油が固まってしまうので、60℃前後になったら廃食油の量に合わせて5滴~20滴程を目安にアロマオイルを入れて混ぜましょう。

好きな容器に適量を注ぎ、割り箸を使って芯をセット

容器に流し込んだ後に、素早く、芯材を割り箸に挟むか結び付けて、上手くキャンドルの中央にセットしましょう。

しばらく置いて固まったら(アロマ)キャンドルの完成です。

是非、皆さんもチャレンジしてみてください。
(アロマ)キャンドルをテーブルやお風呂の器の上に浮かべて見るだけで、幻想的な演出ができるでしょう。

廃食油回収も – コープの「宅配システムトドック」の資源回収

コープさっぽろでは、店舗での資源回収(紙パック、発砲トレイ、アルミ缶、廃食油(天ぷら油))の回収の他に、宅配システムトドックでの資源回収を行っています。

トドックでの資源回収の内容は、紙パック、チラシ、ダンボール、新聞紙、発砲トレイ、ポリ袋、廃食油(天ぷら油)、古着古布となっています。

廃食油(天ぷら油)にフォーカスしてみますと、回収できるのは、植物油および賞味期限のきれた油(未使用)のものとなります。

容器は、水洗いの後、中まで乾かした500mlまたは600mlのペットボトルに入れて、回収をしてもらいます。もっと簡潔に言うと、回収できる容器のサイズは、500mlと600mlのペットボトルのみとなります。

なお、回収できない油としては、

  • 動物性油脂(バター、ラード、ヘット、加工油など)
  • 常温で固まっている植物性油脂(ショートニング、マーガリンなど)
  • 鉱物油、科学合成油(重油、灯油、軽油、ガソリン、エンジンオイルなど)

となっています。

なお、2015年の最終週の1週間で、約7,620リットルを回収しています。また、2014年の1年間では、769トンもの量の廃食油(天ぷら油)の回収を行いました。

この回収した廃食油(天ぷら油)は、バイオディーゼル燃料として再利用できることから、バイオディーゼル燃料リサイクル業者へ依頼し、バイオディーゼル燃料を精製してもらい、その燃料を、回収車の燃料として使用することで、環境に配慮した活動を行っています。

日本国内を見ると、まだまだこのような活動が浸透いない地域が多く見られることから、家庭で眠っている、リサイクル可能な燃料(廃食油)を活用することで、より環境に配慮した生活を送る事ができるのではないでしょうか。

私たち、廃食油ラボも、そのような社会になることを願っています。

豊島区の食用油(廃食油)回収制度

豊島区では、食用油(廃食油)の回収制度があり、毎月1回(毎月第4月曜日、祝日の場合は、翌日の火曜日)回収しています。

回収した食用油(廃食油)は、区内の公共施設で回収し、民間の資源化処理施設でせっけんなどの工業用油脂にリサイクルする事業を行っています。

回収の際に注意することは、廃食油は、もともと入っていた容器(ペットボトルなど)に入れて、キャップをしっかり閉めてだすこと。

容器に入れる際には、温度が十分に下がってからいれないとやけどをするので、気を付けること。

また、未使用の食用油(廃食油)も回収できます。なお、事業系の廃食油や工業用のオイル(車のエンジンオイルなど)は回収できませんので、気を付けなくてはいけません。

このように、各自治体によって食用油(廃食油)の回収を行っており、資源を有効に活用することができることから、自分の住んでいる自治体の情報を確認して、進んでリサイクルを行うようにしてみてはいかがでしょうか。

食用油(廃食油)の問題は、いろいろありますが、一番は環境破壊に繋がる事です。食用油(廃食油)をキッチンでそのまま排水してしまうことで、そのまま河川や海に流れて行ってしまいます。

当然、水質環境が悪くなり、生物にも影響が出てきます。食用油(廃食油)をリサイクルすることで、環境にも配慮した生活を送ってみてはいかがでしょうか。

もし、自分の住んでいる地域で廃食油の回収を行っていないようであれば、自治体に要望を出し、回収してもらえるようにするか、なかなか動いてもらえないようであれば、地域住民で廃食油を集めて、廃食油回収専門業者に依頼するのも良いかもしれません。

なお、私たち廃食油ラボにご依頼いただければ、買取ができますので、ご興味があれば、一度ご相談ください。詳しくはこちらをどうぞ

藻類バイオ燃料

藻類バイオ燃料とは、藻類を原料として生産されたアルコール燃料や合成ガスのことです。

藻類をバイオ燃料とする研究は、1970年代から米国エネルギー省を中心として進められてきており、藻類バイオ燃料の商業化に向けて、最大、2,400万ドルもの助成金を提供しており、3つの研究コンソーシアムを援助するなど、藻類バイオ燃料の研究開発や関連の民間企業への投資に積極的です。

日本では、米国に後塵を拝すものの藻類バイオ燃料の研究は盛んにおこなわれていて、JX日鉱日石エネルギー、日立プラントテクノロジー、ユーグレナの3社による共同研究や、筑波大学、豊田中央研究所、デンソー、出光興産などからなる「藻類産業創成コンソーシアム」は発足しており、研究・実用化の検討が進められています。

藻類バイオ燃料は、一般的には水中に存在する顕微鏡サイズの藻(微細藻類)で、その多くは植物と同様に太陽光を利用し、二酸化炭素を固定して炭水化物を合成する光合成を行い、代謝産物としてオイルを生産します。

微細藻類によるバイオ燃料は、植物由来のバイオ燃料に比べて、桁違いに生産効率が高くて(トウモロコシの700倍といわれています)、トウモロコシなどのように食品利用との競合もないため、次世代バイオ燃料として非常に注目されています。

今後、大量培養技術が確立されれば、日本を産油国にすることも夢ではないのです。

藻類バイオ燃料への期待

2005年~2008年にかけて石油価格が高騰した時期がありました。その際にはトウモロコシやサトウキビなどの穀物を原料としたバイオ燃料の研究開発や実用化が進みました。

しかし、穀物系バイオ燃料の需要が急増したため、食糧価格が高騰したことに加え、穀物の栽培には広大な土地が必要であり、農業機械を動かし、肥料や農薬、水などを大量投入するために、莫大なエネルギーを必要とすることが問題となりました。

そのために、穀物系バイオ燃料は代替燃料に適さないと言う見解も多く、米国では、バイオエタノールの生産に多額の補助金が投入されていることに強い批判が集まっていました。

2009年のG8農相会合では非穀物系の次世代バイオ燃料を開発推進することが共同宣言で採択されました。この非穀物系バイオ燃料の原料として、有力な候補の一つの藻類なのです。

下記の表の通り、穀物などの陸上証物を原料とするものに比べて、数十倍~数百倍の効率の良さと、穀物との競合を避けることができること、培養する際には排水・塩水が利用できるなどの利点があります。

原料の種類によるオイルに面積収量比較
原料の種類 面積収量(キロリットル/ha/年)
とうもろこし 0.2
大豆 0.5
ベニバナ 0.8
ヒマワリ 1.0
アブラナ 1.2
アブラヤシ 6.1
微細藻類 47.7~143.1

動物性油脂から次世代バイオ燃料を製造(米国)

日本国内において再生可能エネルギーの一つとして、軽油代替燃料として廃食油を回収してバイオディーゼル燃料を製造しているが、廃食油以外でも、大豆や藻類、固形廃棄物などのさまざまな原料から石油(化石燃料)に代わる再生可能な燃料を作り出す取り組みが世界中で進んでいます。

アメリカでは食肉加工の際にでる「ゴミ=非食用動物性油脂」である動物性油脂を再生可能なディーゼル燃料に変える試みが始まりました。

大手食肉加工企業のタイソンフーズ社(Tyson Foods)と合成燃料研究企業のシントレアムコーポレーション(Syntroleum Corporation)が協業して、合弁企業であるダイナミックフューエル社(Dynamic Fuels)を設立し、ルイジアナ州のガイスマーに試験工場を建設しました。

昨年10月より操業を開始していて、1日あたり397キロℓのバイオディーエル燃料を生産しています。年間では最大で28万4000キロℓもの生産能力があるといいます。

ダイナミックフューエル社は、現在のアメリカでは典型的な大豆を原料としたバイオディーゼルとは全く異なる燃料を作り出しています。

植物性油脂(廃食油含む)からバイオディーゼル燃料を製造する場合、メタノールなどのアルコール類で化学反応させてから分離・蒸発処理を加えて作り出しますが、動睦性油脂を原料とした次世代バイオディーゼルでは、高圧・高温の状態で水素と化学反応をさせる「水素化」という処理技術を利用します。

処理の結果、基本的には、純粋な炭化水素分子が生まれて、科学的には通常の鉱物ディーゼル燃料(軽油)と同じものができるのです。

軽油に含まれている有害物質のベンゼンは、燃焼すると発がん物質として大気中に漂う事となります。しかしながら、次世代バイオディーゼルには有害物質は含まれておりません。

また、二酸化硫黄、粒子状物質や窒素酸化物などの有害物質の排出もはるかに少なくてすむのです。更には、全行程で排出される二酸化炭素の量も抑えられるというメリットもあります。

さまざまな代替燃料の排出成分を測定している機関である、カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)によると、ダイナミックフューエル社の次世代バイオディーゼル燃料は、軽油に比べ、温室効果ガスの排出が58~80%も少ないとの結果がでています。

藻類バイオ燃料【希望の藻類 オーランチオキトリウム】

2010年12月に筑波大学で開催された「第一回アジア・アセアニア藻類イノベーションサミット(The 1st Asia-Oceania Algae Innovation Summit)」にて筑波大学の渡邊教授らの研究フループにより発表されたのが、オイル生産効率の高い藻類「オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)」です。

オーランチオキトリウムの特徴は増殖のスピードの速さです。これまでに検討されてきた藻類のボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)は増殖スピードが遅いのがネックでした。

オイル生産コストは1リットル当たり約800円であり、1リットルあたり約80円の重油と比較して高コストでした。しかし、オーランチオキトリウムは、オイル含有量はボトリオコッカス・ブラウニーの3分の1ではあるものの、ボトリオコッカス・ブラウニーの36倍の速さで増殖するために、オイル生産効率は単純計算でボトリオコッカス・ブラウニーの12倍となります。

また、オーランチオキトリウムは光合成をおこなわない従属栄養生物と呼ばれている藻類で、周囲の有機物を取りこんでオイルを生産します。

そのため、例えば下水などの有機排水に対して活性汚泥としてオーランチオキトリウムを投入することで、オイル生産と同時に水の浄化ができる可能性も出てきます。

筑波大学の渡邊教授が提唱しているのは、廃水処理とオイル生産を兼ね備えたシステムで、エコと環境の両面にメリットがあります。主な行程は以下のようになります。

  1. 家庭や工場からでる有機排水に含まれる固形物を凝集沈殿させる
  2. 得られた一次処理水の中にオーランチオキトリウムを投入して、オイルを生産する
  3. オイル抽出後の二次処理水に対し、ボトリオコッカス・ブラウニーを用いた光合成によるオイル生産を行う

有機排水中の有機物除去を行う際に、有機物を栄養としてオイル生産を行うオーランチオキトリウムを活用することと、光合成によりオイル生産を行うボトリオコッカス・ブラウニーを段階的に使用することで、オイル生産を高めた点にこの行程の特徴があるのです。

また、オイルを抽出した後に残る、オーランチオキトリウムやボトリオコッカス・ブラウニーは、メタン発酵の行程に利用したり、家畜の飼料の材料とすることができ、無駄のない利用ができます。

バイオ燃料と食糧供給への影響

農作物を原料とするバイオ燃料は、食糧の供給を圧迫するという問題をはらんでいる。国連は、バイオ燃料の潜在的なメリットは大きいとしているが、世界では1日に2万5000人もの人が餓死していることを考えると、バイオ燃料ブームで作物の価格が上昇すれば、食糧の安定供給が脅かされてしまうと警告をしています。

21世紀半ばには、エネルギーと食糧の需要は現在に比べ、2倍以上にふくれあがると見込まれており、逆に、温暖化が進み、今後数十年で農業生産性は現在よりも低くなると考えられていることから、影響は大きくなると予想されています。

食糧の安定供給を脅かさずに、バイオ燃料のメリットを生かすには、食糧以外の原料を用いるしかないといえます。これまでは、トウモロコシの実や、サトウキビのしぼり汁がエタノールの主な原料となっていましたが、植物の茎や葉、更には木くずなど、通常は破棄されるものからもエタノールを作っていくことが出きると考えられています。

バイオ燃料の歴史

バイオ燃料の歴史の話しをするにあたって、自動車の歴史も関係してきます。かのヘンリー・フォードが約1世紀前に開発した第1号のT型フォードは、アルコールを燃料として走る車でした。ルドルフ・ディーゼルが発明した最初のディーゼルエンジンもピーナッツ油を燃料にしていました。

しかしながら、まもなく2人の発明家は、石油に目を付けることになります。石油は、ちょっと精製するだけで、植物由来の燃料よりもはるかにエネルギー効率が高くて、製造コストも安い燃料ということが分かりました。

その後、石油の普及によって植物由来の燃料は需要もなく、すっかり忘れ去られていましたが、1973年に起こった第1次石油(オイル)ショックが起きると、米国をはじめとする石油輸入国はエタノールを見直して、ガソリンに混合して供給不足を補いました。

その後、アルコール燃料が本格的に市場に再登場したのは2000年になります。おもにガソリンに混ぜて排気ガスをクリーンにする添加剤として利用されました。

さらに中東情勢の混乱によって、エネルギーの安定供給が再び見直されることとなり、米政府がエタノールの利用促進を掲げて、バイオ燃料ブームに火が付いたと言われています。

ここ最近米国では、シェールガスの採掘技術の発達によって、採掘量が増加してきたことにより、エタノール燃料については以前に比べ、縮小傾向にあるといえます。

このようにバイオ燃料は、石油の価格や他のエネルギーの台頭や衰退に、非常に左右される歴史を送ってきていいます。2000年以降では、環境の面からバイオ燃料は見直されてきていますが、原料の価格や安定供給がカギとなっています。

バイオ燃料は地球のためになるのか

ガソリンやディーゼル燃料に代わる、トウモロコシ、大豆、サトウキビなどを原料とした「再生可能燃料」は、低迷する農業地帯の経済を活性化させ、中東からの石油依存を断ち切り、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減してくれると期待されています。

バイオ燃料に含まれている炭素は、作物が生長する過程で大気から取り込んだものになるので、それを排出しても大気中のCO2濃度は変わりません。理論上はCO2の排出量は差し引きゼロになります(※カーボンニュートラル)。

ここで重要となるのは、これはあくまで「理論上」の話だと言う事です。米国のバイオ燃料は現状を言うと、農家や農業関連の巨大企業には大きな利益をもたらしていますが、環境にはあまり良い影響を与えていません。

トウモロコシの栽培には大量の除草剤と窒素肥料が使われていることもあって、土壌の浸食を起こしやすくなっています。しかも、エタノールを生産する行程で、精製されるエタノールで代替できる量とほとんど変わらない量の化石燃料が必要になってしまいます。大豆については、トウモロコシよりも少しだけましといった状況です。

また、米国では土壌と野生生物の保護のために、畑の周辺の約1400万ヘクタールの土地が休閑地となっていますが、バイオ燃料ブームでトウモロコシと大豆の価格が上がれば、この休閑地までも耕作されて、土壌に蓄積されているCO2が大気中に放出されるのではないかと懸念されています。

2007年頃、ベイオ燃料ブームが到来した際には、トウモロコシ価格も暴騰し、米国の作付面積は戦後最大規模にまで広がりました。その際には収穫されたトウモロコシの約2割がエタノール生産に回されたという事です。

国産の作物でまかなえる量には限りがあるものの、バイオ燃料に寄せられる期待は大きくなっています。理由は、ブラジルという成功例があるからです。

ブラジルはガソリンの代替燃料としてサトウキビからエタノールをつくる政策を導入して30年以上経過しています。2006年にブラジル政府は、エタノールと国産石油の増産によって、石油の輸入をゼロにできたことを発表しました。

ただ、エタノール燃料は、製造方法しだいでは「百害あって一理なし」になりませません。逆に、野生生物を保護し、土壌中に蓄積された炭素も放出せずに、あらゆる面で恩恵をもたらす方法もあると言われています。

成功のカギは、食物以外の植物を原料とすることにあるといいます。今後、様々な方法を研究し、地球にやさしい方法を見出していくことが必要となるでしょう。