2010年12月に筑波大学で開催された「第一回アジア・アセアニア藻類イノベーションサミット(The 1st Asia-Oceania Algae Innovation Summit)」にて筑波大学の渡邊教授らの研究フループにより発表されたのが、オイル生産効率の高い藻類「オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)」です。
オーランチオキトリウムの特徴は増殖のスピードの速さです。これまでに検討されてきた藻類のボトリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)は増殖スピードが遅いのがネックでした。
オイル生産コストは1リットル当たり約800円であり、1リットルあたり約80円の重油と比較して高コストでした。しかし、オーランチオキトリウムは、オイル含有量はボトリオコッカス・ブラウニーの3分の1ではあるものの、ボトリオコッカス・ブラウニーの36倍の速さで増殖するために、オイル生産効率は単純計算でボトリオコッカス・ブラウニーの12倍となります。
また、オーランチオキトリウムは光合成をおこなわない従属栄養生物と呼ばれている藻類で、周囲の有機物を取りこんでオイルを生産します。
そのため、例えば下水などの有機排水に対して活性汚泥としてオーランチオキトリウムを投入することで、オイル生産と同時に水の浄化ができる可能性も出てきます。
筑波大学の渡邊教授が提唱しているのは、廃水処理とオイル生産を兼ね備えたシステムで、エコと環境の両面にメリットがあります。主な行程は以下のようになります。
- 家庭や工場からでる有機排水に含まれる固形物を凝集沈殿させる
- 得られた一次処理水の中にオーランチオキトリウムを投入して、オイルを生産する
- オイル抽出後の二次処理水に対し、ボトリオコッカス・ブラウニーを用いた光合成によるオイル生産を行う
有機排水中の有機物除去を行う際に、有機物を栄養としてオイル生産を行うオーランチオキトリウムを活用することと、光合成によりオイル生産を行うボトリオコッカス・ブラウニーを段階的に使用することで、オイル生産を高めた点にこの行程の特徴があるのです。
また、オイルを抽出した後に残る、オーランチオキトリウムやボトリオコッカス・ブラウニーは、メタン発酵の行程に利用したり、家畜の飼料の材料とすることができ、無駄のない利用ができます。