ガソリンやディーゼル燃料に代わる、トウモロコシ、大豆、サトウキビなどを原料とした「再生可能燃料」は、低迷する農業地帯の経済を活性化させ、中東からの石油依存を断ち切り、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減してくれると期待されています。
バイオ燃料に含まれている炭素は、作物が生長する過程で大気から取り込んだものになるので、それを排出しても大気中のCO2濃度は変わりません。理論上はCO2の排出量は差し引きゼロになります(※カーボンニュートラル)。
ここで重要となるのは、これはあくまで「理論上」の話だと言う事です。米国のバイオ燃料は現状を言うと、農家や農業関連の巨大企業には大きな利益をもたらしていますが、環境にはあまり良い影響を与えていません。
トウモロコシの栽培には大量の除草剤と窒素肥料が使われていることもあって、土壌の浸食を起こしやすくなっています。しかも、エタノールを生産する行程で、精製されるエタノールで代替できる量とほとんど変わらない量の化石燃料が必要になってしまいます。大豆については、トウモロコシよりも少しだけましといった状況です。
また、米国では土壌と野生生物の保護のために、畑の周辺の約1400万ヘクタールの土地が休閑地となっていますが、バイオ燃料ブームでトウモロコシと大豆の価格が上がれば、この休閑地までも耕作されて、土壌に蓄積されているCO2が大気中に放出されるのではないかと懸念されています。
2007年頃、ベイオ燃料ブームが到来した際には、トウモロコシ価格も暴騰し、米国の作付面積は戦後最大規模にまで広がりました。その際には収穫されたトウモロコシの約2割がエタノール生産に回されたという事です。
国産の作物でまかなえる量には限りがあるものの、バイオ燃料に寄せられる期待は大きくなっています。理由は、ブラジルという成功例があるからです。
ブラジルはガソリンの代替燃料としてサトウキビからエタノールをつくる政策を導入して30年以上経過しています。2006年にブラジル政府は、エタノールと国産石油の増産によって、石油の輸入をゼロにできたことを発表しました。
ただ、エタノール燃料は、製造方法しだいでは「百害あって一理なし」になりませません。逆に、野生生物を保護し、土壌中に蓄積された炭素も放出せずに、あらゆる面で恩恵をもたらす方法もあると言われています。
成功のカギは、食物以外の植物を原料とすることにあるといいます。今後、様々な方法を研究し、地球にやさしい方法を見出していくことが必要となるでしょう。